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将来予測が困難な時代、企業に求められること
今、日本企業は変革期を迎えています。マーケターの皆さんの多くは日々、顧客体験(CX)の向上を目指していると思いますが、実はその前提として必要なのが従業員体験(EX)の向上です。
近年は働き方改革やリモートワークの浸透により、労働の意義を問い直す機会が増加しています。特にZ世代においては、収入よりも自由時間を重視する価値観が顕著となり、従来の労働観からの大きな転換が見られます。
組織と個人の関係性においても変化が生じており、人的資本の重要性が広く認識されるようになりました。加えて、ビジネス環境は昭和・平成前半と比較して著しく複雑化しています。異業種からの参入や既存ビジネスモデルの崩壊など、過去の延長線上での将来予測が困難となっている状況です。
そこで、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)は創業150周年を迎える前年、2022年に企業理念の再定義に取り組みました。グループ全体で6万人超の社員からなる組織の求心力となるものです。基本理念、パーパス、バリューの3 要素を見直し、2023年5月に公表しています。
また、ブランドスローガンをそれまでの「One MIZUHO 未来へ。お客さまとともに」から「ともに挑む。ともに実る。」へと変更しました。これは、時代の先を読み、お客さま・社会の変化を捉え、課題に対するお客さまの挑戦を支え、自らも変革に挑戦しながらお客さま・社会とともに成長する決意を表現しています。
みずほの源流を作った渋沢栄一の「公益と私益の両立を追い求めよう」とする思想に通ずるものです。このパーパスに込めた決意を全社員が共有し、目指すべき姿の実現に向けてグループ一丸となって取り組んできました。
2023年はパーパスの浸透に注力し、2024年はそれを継続しながら、価値観や行動軸であるバリューの浸透と実践に重点を置いてきました。さらに、2023年5月の中期経営計画では、非財務指標として社員エンゲージメントとインクルージョンの指標を KPIとして新たに導入しました。これはエンゲージメントとインクルージョンに関わるそれぞれ4つの質問への肯定的回答の比率を測定するもので、着実に成果を上げています。
6万人超の組織で企業理念を浸透させるために
みずほでは、社内の取り組みを社外に発信し、それに対する評価を社内に環流させる「2つの輪を回す」ことを重視しています。これは6万人超の大規模組織における「伝える」という課題への重要な解決策となっています。
社内では、新しい企業理念に根差した企業風土変革の活動を展開。全社的なトップダウンとボトムアップの双方向から、様々な施策を主導しています。そして、この取り組みで生まれたアクションを、さらに対外発信に活用していく循環を作っています。
社外に向けては、新たなパーパスに基づく情報や施策を、リブランドされたコミュニケーションを通じて継続的に発信しています。そして、社外からの評価を社内に還流させ、さらに社員の背中を押す好循環を生み出すことを目指しています。
たとえば、2024年7月の渋沢栄一を肖像とした新1万円札発行を機に、社員への企業理念(パーパス/バリュー)の浸透を加速させるキャンペーンを実施しました。対外発信を通じた「ミラー効果」により自分ごと化を促し、社員へのインパクト最大化を図っています。
具体的な施策として、単なるイメージ発信ではなく、社員が実際に企業理念を体現した推奨事例を自社メディア「みずほジャーナル」で取り上げたほか、年次の「みずほアウォード」の役割の見直しと、それを中心にした企業理念浸透の仕組み化を行いました。
これらの取り組みの結果、社員のエンゲージメントスコアは着実に向上しており、特に社員の「変革の実感」は2年間で52%から69%へと大きく上昇しました。今後は行動様式の変革を促し“大きな潮流”にすべく、引き続き多様な打ち手を講じていく予定です。