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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~

「インプレッション取引」と「GRP取引」の共存で局収入は最大化する

 関東キー局の2023年度決算が出揃い、ほぼすべての局でタイム、スポットともに前年を下回るという厳しい状況が明らかとなった。テレビ局が生き残っていくために、テレビCMセールスの変革は待ったなしの状況だ。テレビ局・広告主ともにWin-Winとなる変革として、筆者が提案するのが「インプレッション取引」への転換である。そのアイデアと仕組みを提言する本連載。今回は、スポット1週間分のすべての枠において、現状の「GRP取引」を行った場合と「インプレッション取引」に転換した場合、そして「インプレッション取引+GRP取引」を行った場合の総収入の違いを見てみる。

「総量評価によるインプレッション取引」はテレビ局内の連携を高める

 前回、総量評価によるインプレッション取引で使用するCM1本単位の金額算出、および新指標として提唱する「totalTCPM」についてご説明しました。

 これらは単にテレビCMの新しい取引基準というだけでなく、テレビ局内の制作や編成、そして(広告会社経由だとしても)広告主と向き合っている営業との連携を強化する新たな指標となれる可能性があります。

 テレビ広告業界に限らず、売上(収入)が落ち込むと営業はどうしても売り物を増やしたくなりますが、これまでに述べてきたようにテレビCM量には制限があります。その上限値にほぼ達している現況において「増枠申請」は常に受け入れられるものではないでしょう。

 仮に増枠ができたとしても、それが更なる視聴率低下のきっかけとなる危険性もはらんでいます。国内のテレビCM量は、特にゴールデンタイムやプライムタイムで比較すると米国のリニアTV(従来のテレビ放送)よりもかなり少ないのですが、その米国では一時期増えすぎたCM量に嫌気がさした視聴者がテレビ離れを起こしたため、再度CM量を減らさざるをえなかったこともありました。

 明確なデータがある訳ではないですが、国内のテレビCM量と総個人視聴率(PUT)にも何かしらの因果関係があるような気がします。

 そう考えると、すぐには難しいのでしょうが、逆にCM量を減らしていけば地上波テレビに視聴者が戻ってくる可能性もないとは言えません。そのためにもやはりCM単価をもっと高くしていけるような良策が必要です。PUTは下がり続け、安く売って、常に満稿という状況から抜け出さなければなりません。

 図表1は「同じようなインプレッション数でもCM枠の価値が変わる」、また「少ないインプレッション数でも同等の価値を持つCM枠になる」ということを実際のCMデータでそれぞれ比べてみたものです(※1)。

(※1)CM1~4の各セグメントにTCPMを、MFC:1円/MFT:1,000円/MF1:1,500円/MF2:1,000円/MF3:300円/MF4:1円とすべて同じ設定にした試算

総量評価でインプレッション取引した際のCM金額とtotalTCPM
【図表1】総量評価でインプレッション取引した際のCM金額とtotalTCPM。自局のCM枠の価値を社内共有できる指標となれる(クリックすると拡大します)

 この二つはほぼ同じこと意味していますが、営業は実際に抱えているバックオーダーや今後の戦略的なセールスに対して具体的に欲しい視聴者層や視聴者構成のCM枠(番組)を社内に共有することができます。また、制作や編成もやみくもに視聴率アップや増枠だけを求められるよりも、営業の要請に対してより的確な対策が打てるようになるでしょう。

 さらにCM1とCM4を見比べてみると、個人視聴率および総インプレッション数はCM1がCM4の2倍近くありますが、CM金額は、CM4もCM1の9割近くまで高められています。またCM1〜4をtotalTCPMで比較すれば、どのCM枠が効率的にセールスできているのかは一目瞭然となります。

 totalTCPMは一見複雑そうに見えますが、前回ご紹介した一般式にすると意外とシンプルです。つまり、計算するにあたっては大きなシステムを構築する必要もありません。さすがに表計算ソフトだけでは厳しいかも知れませんが、Pythonなどで簡易なプログラムを利用すれば、営放システム(※2)などには触らずとも現在の各局の作案作業にインプレッション指標の取引を十分に取り込んでいけるはずだと考えています。

(※2)民放テレビ局のCM素材や放送スケジュールなどを管理する基幹システム

 初めから完璧なものであることにこだわるよりも、できるだけ早く新たな仕組みを試し、変革を前に進めることがより重要です。

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「インプレッション取引が有効な枠」と収入増を検証する

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門会社「デジタル...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長

関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等に従事する...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/26 15:25 https://markezine.jp/article/detail/46178

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